社会復帰

2004/09/30

前回、夫の突然の入院・手術のことを書いたが、退院後しばらくの自宅療養を経て、既に社会復帰を果たした。実際のところ、手術のあとはまだ痛む様子だし、傷口に当てたガーゼも取れていない。もちろん早く歩くことや、長い間かがんでいることは、まだうまく出来ない様子でもある。しかし、会社をそんなに長く休んでいる訳にもいかず、少しずつでも元の生活に戻していくしかないのである。


手術で摘出した腫瘍の組織検査が行われたのだが、結果的に悪性の腫瘍だった。要するに癌である。今回は部位が部位だけに、最初に組織を一部取り出して検査する、という形がとれないために、腫瘍を含む部位を全て摘出し、そのあとに組織検査を行うという手順だったわけだが、手術後、摘出したモノを見せてもらった際に担当の医師から「おそらく悪性でしょう」というような説明があったため、検査結果を伝えられた際の動揺はそんなに無かった。
そしてそのような事をこうしてここに書けるのは、幸い現在の段階では、他の部位への転移は見られず、また今回の腫瘍が出来た部分がそれを丸ごと摘出することにより、今後のほかへの転移はまず考えられない、というお話があったからだ。要するに今回の手術を行うことにより、再発・転移の確率は極めて低く無いに等しい状態になる、ということだ。


とは言え、再発の可能性が全く無いわけではない。今後は定期的に病院へ通い、経過を見て、再発していないかの検査を行うことが必要になる。今後、異常が見つからなければ次第に検査の間隔はゆっくりになるそうだが、気持ち的には頻繁に検査してもらったほうが安心できるというものだ。しかし夫としては検査のたびに、そして検査結果を聞きに行くために、度々会社を休まなくてはいけないことになるのだから、何かと大変だ。さらに大きな病院なので、行くたびにかなりの時間を待合室で過ごすことになってしまう。まぁ自分の体のためなのだから仕方のないことだが。


夫が入院している間、夫と私の親もずっとこちらへ来ていてくれた。私たちは二人とも親と離れて暮らしているのだが、今回は色々頼りにさせてもらった。心細いときには、誰かが近くに居てくれるだけでも力になるものだ。慣れない土地で毎日一緒に過ごしてくれてありがとう。直接お礼を言うのはなんだか恥ずかしいので、こんなところでお礼を言ってみる。いつかきちんとこの気持ちを伝えたいと思っている。
そのほかにも入院前日にフライングでお見舞いに来てくれた友人たちや、元気の出る贈り物をしてくれた友人、明るい笑顔を見せに来てくれた叔母たちにも感謝したい。


さて今回の「精巣腫瘍」について少々書きたい。精巣腫瘍もしくは睾丸腫瘍と言われるもので、その名のとおり男性の精巣に発生するものだ。精巣というのは、男性ホルモンの分泌と精子をつくりだす機能を持っているが、それらは別の細胞によるものなのだそうだ。精巣に出来る悪性腫瘍のほとんどは、精子を作るもととなる精母細胞と呼ばれるものから発生するものだという。
腫瘍自体は触った際の「しこり」として感じられるそうだが、ごく小さい場合には超音波検査で観察することができるそうだ。今回の夫のように、腫瘍が精巣内をほとんど占める状態になると、精巣全体が「しこり」のようになり、かつ左右の大きさやかたさに違いが出てくるのだそうだ。悪性の場合、増殖がかなり早く、転移しやすいそうで、今回は早めの処置が行えて本当によかったと思う。
前にも書いたが、この部位は先に組織の一部をとって検査をするということは不可能なため、精巣を摘出する手術をするわけだが、その時点で転移がなければ病巣(すなわち精巣)を摘出することにより、完全に根源を治療したことになるのだそうだ。
当然、夫も手術の前に他の部分への転移がないことは検査済みで、今回の手術によりまずは一安心といったところだ。


ちなみに今回の夫の腫瘍は日々の観察?のおかげで早期発見することが出来たが、普通ちょっとした体の異変に自分では気がつきにくいものだと思う。会社で定期的に健康診断を受けていても、今回の病気はそれには全く影響しなかったわけだし、更に私のようにほとんど病院と縁の無い生活をしていると検査自体する機会も無い。気にしすぎるのもなんだけれど、これからは、ちょっとした変化や、自分の体からの何気ないサインを見逃さないようにしたいと思った。